頸動脈エコー検査は、脳に酸素や栄養を送り込む頸動脈と呼ばれる首の太い血管の動脈硬化度を評価する検査です。動脈硬化とは、動脈血管の弾力性が失われて硬くなったり、コレステロールなどが沈着して血管内腔が狭くなってしまう状態です。一般に、動脈硬化症になると血流が悪くなり、最悪の場合には血流が途絶えてしまうこともあります。これが脳や心臓の血管に起こると、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患をきたします。日本でも生活様式の欧米化により、高血圧、高脂血症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病が増加しています。これらの生活習慣病はいずれも動脈硬化症の重要な危険因子であり、適切な予防や治療が行われないと全身の動脈が次第に侵されてゆき、重要臓器の虚血をきたしてしまいます。従って、血管の動脈硬化性変化を早期に発見することは、これらの重大疾患の予防や治療のためにも非常に大切なことです。
この検査では、頸動脈の観察可能な範囲に狭窄や閉塞があるかどうかを調べます。断層像による血管の形の変化(形態診断)はもちろん、血流情報などを介して血管の働きの変化(機能診断)を観察します。医学的にも、頸動脈の狭窄率が70%を超えると脳梗塞などの虚血性脳血管障害の危険率が増加すること、病変が狭窄なのか閉塞なのかを鑑別することが治療方針の決定に重要であること、などが知られています。また、頸動脈はアテローム性動脈硬化の好発部位であることから、頸動脈の硬化の程度を評価すれば全身の動脈硬化度を把握することができます。従って、動脈硬化の危険因子があり、脳血管障害、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症などの血管病を発症する疑いのある症例の予防や早期発見に極めて有力な検査です。日本で行われる人間ドックにおいても、動脈硬化の早期発見やその進展度を評価するためにこの検査を取り入れる施設が増えてきています。
頸動脈エコー検査では、超音波検査用の特別なプローブを首に当てて、頸動脈を観察します。腹部超音波と同様の検査法です。ドップラー効果の原理を応用して、血流をカラーで表示し、狭窄の有無と部位、血流速度、血流の乱れなどを詳しく調べます。体表面からアプローチする超音波検査法は、患者さんの苦痛は全くなく、またX線やCT検査のように放射線を被曝することもありません。血圧やコレステロール値が気になる方、喫煙される方、脳卒中や心臓発作などの家族歴のある方、一度この検査を受けてみてはいかがでしょうか。
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